私たちはふだん、山を単なる地形の一部として見ています。しかしそこには、悠久の時を経て守られてきた、見えにくい真実が刻まれているのかもしれません。
大本の霊場の一つである「鉢伏山」は、まさにそのような神秘のベールに包まれた場所です。

封印を解かれた「但馬の尊き神」
鉢伏山は標高1,221メートル、但馬・因幡・美作・播磨の国々に裾野をひく霊峰です。
この山が大本の歴史の表舞台に現れたのは、第二次大本事件が解決した直後、昭和21年5月のことでした。
かつて出口なお開祖は、「但馬には、どえらい尊い神さまが鎮まっていられるので、早く開いてくだされよ」と言い残しました。そのお言葉を実現すべく、出口王仁三郎聖師、出口すみこ二代教主、出口直日三代教主の三柱が揃って鉢伏山の麓・大笹に鎮座する「竜宮神社」に参拝され、翌日には山開きのご神事が厳かに執り行われました。
この山開きにあたり、出口王仁三郎聖師が霊眼で示したのが、鉢伏山の成り立ちです。
学説では「古第三紀」(6,600万年前から2,303万年前)の地殻変動による隆起とされていますが、出口王仁三郎聖師は「太古、日本海底の最深地点、竜宮の大黒柱の立っていたところが爆発隆起し、現在のお山を形造ったものである」と説きました。
山頂こそが、かつての海底神殿の「大黒柱」でした。
竜宮岩と「八力の神」
鉢伏山の麓、大笹に鎮座する竜宮神社の中心は、社殿の背後にそびえる「竜宮岩」と呼ばれる巨大な神岩そのものにあります。
出口王仁三郎聖師はこの岩を「地軸より生え立っており、竜宮の乙姫さまのご神体である」と示しました。
この岩をめぐっては、古くから不思議な伝承が残っています。天文15年(1546年)の大洪水の際、大笹村が流失しかけたとき、田淵家の先祖がこの岩に銀を捧げて祈願したところ、濁流が岩を境に二手に分かれ、村は難を逃れたと伝えられています。
ところが、のちに「迷信」として祭祀が途絶え、岩の上に堆肥や薪が置かれるようになると、家々に病人が絶えなくなりました。
大正7年、大本の宣伝使・湯浅仁斎氏がこの地を訪れて岩の重要性に気づき、清掃とお詫びのご神事を行ったところ、80日間寝込んでいた病人が即座に回復するという神徳が現れたといいます。
こうした伝承が示すように、竜宮神社の祭神である竜宮の乙姫さま(豊玉姫神・玉依姫神)は、大本の教えにおいて深い意味を持つご神格です。明治25年の開教当初、国祖・国常立尊が世に現れた際、真っ先に駆け参じたのが竜宮の乙姫さまであったと説かれています。
また、「世の立替え・立直し」における経済的・物質的な守護を司るとされ、ご神諭には
「竜金の乙姫、是から金の世話を為して頂くぞよ。此の世に成れば、金は何程でも要るから、此の乙姫、金は何程でも竜宮に蔵めて在るぞよ。此の乙姫が世に出たなれば、金の心配は要らぬぞよ。結構な世に成りたぞよ。」(『おほもとしんゆ』第五巻)とあります。
さらに、慾の深い醜い心を自ら捨てて国祖に宝をすべて渡したという「改心のひながた」としての神徳をも有しておられます。

その乙姫さまのご神体である竜宮岩は、山開きよりもはるか以前から、出口すみこ二代教主の夢の中にその姿を現していました。
この地を初めて訪れる二十年も前のこと、夢の中に十丈(三十メートル)もの巨岩がうなりを立てて現れ、すみこ二代教主はその背に乗って天空を駆け巡ったといいます。その雄大な夢の舞台こそが、鉢伏山でした。
山開きの当日、平時は強風が吹く山頂は不思議なほど無風で、一点の曇りもありませんでした。しかし、祭典が始まるやいなや、晴れ渡った空は深い霧に包まれ、一同はその神秘に打たれたといいます。
この時、出口すみこ二代教主によって「八力(はちりき)の神」という神名が記されました。出口王仁三郎聖師はのちに「八力の神、あれはおすみがつけた名や」と述べています。
大本の教えにおいて、「八」の言霊には「輝き開く」という意味が込められています。「鉢伏(八伏せ)」とは、主神の力徳である八力が伏せ隠されていた場所が、ついに開かれることを意味していると拝察できます。昭和二十一年の鉢伏山開きは、神々さまの秘められた力がいよいよ現界へと光り輝き出す、重大なご神事であったのではないかと思われます。
「無限の宝」を隠す山
出口王仁三郎聖師は山上で、「大勢の神様がいられて、もったいなくて、もったいなくて、居られない」「ここは無限の宝を隠してある」と、生命の根源に対する深い畏敬の念を漏らされました。
この時、鉢伏山から持ち帰られた小さな霊石は、紆余曲折を経て、現在は綾部・金竜海の冠島神社に奉斎されています。金竜海とは、日本海に浮かぶ竜宮海(沓島・冠島の間)を地上に写した雛型です。竜宮神社で顕現した乙姫さまのご神力は、この霊的なつながりを通じて、世界を浄化する働きとして波及してゆく仕組みになっていると教えられています。

海底の最深部に秘められていた主神の力が、人類救済のために地上へと爆発隆起して現れた場所――それが鉢伏山です。

東海教区特派宣伝使 前田 茂太
